AIの認識精度を上げるうえで悩ましいのが、めったに現れない「ロングテール」のデータです。ありふれたケースはいくらでも集まる一方、本当に効くのは珍しいケースのデータ。とはいえ、それを人手で延々と探し続けるのは現実的ではありません。
そこで当社が開発したのが、AI自身が“好奇心”で珍しいデータを見つけて集める仕組み Curiosity Engine です。当社の認識AI基盤 System4 がもつ「好奇心(新規性判定)」を土台に、発見 → 希少性の保証 → 自動ラベリング → 出荷までを人手ゼロで回します。
デモ映像
「好奇心」をAIに
人は新しいものに出会うと、見て・比べて・名づけて・覚えるという流れをたどります。この“好奇心”のはたらきをAIに持たせたのが Curiosity Engine です。すでに知っているものは素通りし、「知らない」「珍しい」と感じたものだけを拾い上げていきます。
ハードウェアに依存せず、入力が画像の流れでありさえすれば動くのも特長です。Webカメラでも、ROS 2 で動くロボットでも、つなぎ込みは1枚のアダプタで済みます。
しくみ ― 2つのゲートで「知らない」を選り分ける
入力される画像の流れに対して、Curiosity Engine は2段階で判断します。
- 新規性ゲート ― すでに知っているものか、知らないものか。知っているものはそのまま素通りさせます。
- 希少性チェック ― 知らないものの中でも、本当に価値のある「珍しい」ものだけを残します。既知の世界からの距離を要求する“純度ゲート”などで、「既知に近いだけの境界ノイズ」を弾くのがポイントです。
この2つを通過したものだけが、理由付きの教師データになります。
何を集め、何を捨てるか
実際のランでは、AIが自力で見つけた珍しいケースを自動で収集し、さらに CLIP で仮の名前まで付けます。
一方で、「既知に近すぎるだけ」のものは希少性チェックで棄却されます。そして重要なのは、収集した1件ごとに「なぜ・どう抽出したか」が日本語で記録されることです。判定スコア・当時のしきい値・通過したチェック・近傍との距離まで残るため、あとから監査できます。
検証で分かったこと
現場を模した「長い尾(ロングテール)を含むストリーム」を、実画像の公開データセット Caltech-256 で構成して検証しました。AIには一部のクラスだけを知っている状態から始めさせ、残る珍しいクラスを“自力で”見つけて集められるかを採点します。
主な結果は次のとおりです。
- 1,010枚の観測から、最終的に38枚の希少データを自律収集(捕捉率 約76%)
- 純度を壊す主犯は「既知の境界ノイズ」だと判明。純度ゲートの導入で 純度 16.7% → 81.6% に改善
- 捕捉率と純度は1つのノブでトレードオフ調整可能(純度優先にも、捕捉優先にも振れる)
- 処理速度は 1,010枚を約131秒(CPUのみ)。GPUを使えば十数秒オーダー
まとめと今後
Curiosity Engine は、「発見 → 希少性の保証 → 自動ラベリング → 出荷」までを人手ゼロで回す、AIの学習データを自ら育てるための仕組みです。収集の一件ごとに理由が残るので、結果を後から検証・監査できます。
今後は、仮ラベルの自動検証(VLM の活用)、ROS 2 で動くロボットへの展開、複数ラン間での重複排除などに取り組んでいきます。ロングテールに強いAIづくりの土台として、活用を広げていく予定です。